てんせんめんの長期投資の旅

投資を学び、資産と自分自身の成長を 追及していきます

6062 チャームケア 競合比較(ニチイ学館)

老人ホーム運営数4位は9792 ニチイ学館です。1968年に医療事務受託事業として創業。介護業界に多角化して2001年より施設介護に進出しています。2008年にはグッドウィル・グループ傘下のコムスンが介護報酬不正請求から行政処分を受け、ニチイ学館が買収します。ニチイ学館オリジナルの老人ホームは現在「ニチイホーム」というブランドで、前払金なしの月額利用料は平均35万円と高額です。一方、コムスンから買収した老人ホームは「ニチイケアセンター」というブランドで、同じく前払金なしで月額20万円と低価格になっています。また、ニチイホームは首都圏特化型ですが、ニチイケアセンターは広く薄く全国に展開しています。また、住宅型が一つもないようです。

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現在の有料老人ホームの数は両ブランド合わせて149です。ニチイケアセンターはグループホームが282ありますが、老人ホームとは直接競合しないので除いています。老人ホームの開設推移を見ていくと、アップダウンがあります。特に直近3年間は新規開設が少なくなっています。既存物件の入居率は高そうですし、新規開設コストがないため介護事業の利益率も10-11%で高原安定しています。なぜ直近の開設がないのかは、有報を読んでも良く分かりません。施設数や稼働率など、基礎的な経営データすらなく、時価総額1000億円を超える介護業界を代表する上場企業の一つの割には開示が悪いという印象を受けました。

低価格帯路線に力を入れていないことは明らかです。チャームケアやベネッセと同様に、都市圏ドミナント+介護付+高価格帯というのが、現在の経営環境における最適解とみている気がします。この点で差違がないのは、チャームケア株主としては残念な点です。ちなみに10-11%という利益率は低価格帯と高価格帯のミックスなので、高価格帯が14-15%稼いでいても不思議ではなく、チャームケアの既存事業利益率のヒントになります。

ニチイ学館は2019年9月に創業者寺田明彦氏が死去されました。その後、2020年5月にベインキャピタルによるMBOが発表されました。非上場後の経営戦略は分かりませんが、おそらく教育など不振事業撤退を急ぎ、安定的にキャッシュフローを稼げる医療事務外注と介護事業を残して再上場するプランではないでしょうか?借入返済を優先して投資を絞ってくれると有難いのですが、3-5年先の再上場エグジットを目指しているのであれば、投資を再開して、成長できる企業としてバリュエーションを高めてくる可能性もあります。チャームケアの競合として、高価格帯の運営実績も十分ですし、一番気味が悪いと感じます。

下のグラフはニチイ学館の過去20年のEPS推移です。ご覧の通り、2011年のGABA買収など多角化が失敗して鳴かず飛ばずでした。医療事務と介護の主力事業はなお日本トップの競争力があるので、ベイン買収によって眠れる獅子が起きないと良いのですが。

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