てんせんめんの長期投資の旅

投資を学び、資産と自分自身の成長を 追及していきます

株価上昇銘柄から学ぶ

先日、Altafox Capitalのまとめた株価上昇ランキングを紹介しました。欧米市場における過去5年間のリターン上位100社を調べて、共通項が見えてきました。

以下、中央値です。

<5年前の状態>
売上高:85MM USD
過去5年の売上成長:9%CAGR
GPM:30%
OPM:7%

<直近の状態>
売上高:240MM USD
過去5年の売上成長:20%CAGR
GPM:39%
OPM:13%
インサイダー保有:25%

まとめ

①売上成長

株価が中長期にわたって3倍以上に上昇するには、売上成長が不可欠です。売上成長が年率10%以下の会社もありますが、大部分は10%以上で成長しています。逆に、40%以上と急成長した会社ばかりではないようです。

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②利益率

売上成長が続けば、必然的に利益率は改善します。営業利益率の中央値は13%ということで、超高収益ということでもないでしょう。むしろ、売上成長ポテンシャルの方が大切だと感じました。

③インサイダー比率

一番特徴的だったのは、インサイダー保有比率の高さです。日本株でも、個人大株主(たいていは創業者)がいる会社は強い印象があります。中央値が25%保有というのは、市場平均に比べてかなり高いはずです。身も蓋もない話ですが、やはり身銭を切っている経営者は事業にかける必死さが違うということなのでしょう。

④事業実績

事業実績を、営業CF、借入、シクリカル性の3つを0~1で評価した場合、いずれも0.5を上回りました。高いリターンを得るためには、必ずしも借入が多いような銘柄ばかりを保有する必要はないということです。継続的に営業CF黒字、借入なし、シクリカル性なし、というピカピカ銘柄でも十分に達成可能だということです。

急騰銘柄 Zynex

Altafox CapitalのConnor Haleyさんが、過去の急騰銘柄を学ぶことが重要だと語っていました。過去5年間で株価が3.5倍以上になった100銘柄をまとめたプレゼン資料(リンク)を公開してくれたので、1日1銘柄調べていこうと思います。

初日は、Zynexです。過去5年の株式リターンは、なんと91倍です。

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社名:Zynex
本社:USA
創業:1996
創業者:Thomas Sandgaard(1958、現CEO、43%保有、創業時38歳)

 Zynexは電気リハビリ器具の販売を行っています。2012年にオバマ政権が始まり、健康保険拡充政策の元、電気リハビリに対する保険が削減され、かつ保険請求手続きが煩雑化したそうです。結果、2012-2014年の2年で売上は$40mmから$11mmに急減します。

2年間で売上1/4とは、コロナ禍の比ではありません。オバマ政権初期の人気の裏には、このような犠牲もあったんですね。当然コスト削減が追い付かずに大赤字で、会社の存続が危ぶまれます。

2015年11月に最大の競合であったEmpi社(売上$250mm)が電気リハビリ部門を閉鎖します。Zynex社はEmpi社の営業部隊を採用し、結果として受注は2015年の月1,100件から2016年は2,100件に急増します。

コスト削減を進めていたところに、競合退場による神風が吹き、オペレーティングレバレッジが効いて営業利益率は2017年に38%まで回復します。

感想

健康保険など政策依存したビジネスモデルの怖さを感じました。特にアメリカでは、大統領交代で外部環境が激変するんですね。誰が政権になっても変化の少ない日本の経営環境とは大違いです。

外部環境悪化で苦しんでいて、最大の競合先の退場という神風。存続が危ぶまれていた企業が、数年後にOPM30%以上まで回復したのですから、株価が100倍になる訳です。超向かい風から、超追い風へと数年でシフトした事例でした。

MMMB 2020.Q2決算

Mama Mancini (MMMB)という米国のミートボール製造販売企業の2020.Q2決算が発表されました。売上は$10.4mm(+28%YoY)、GP$3.2mm(31%)、OP$0.8mm(7.8%)という内容でした。

(1)コロナ禍で自宅での食事が増えていること
(2)健康志向の高まりから、無添加ミートボール需要が高まっていること

2つの追い風を受けているようです。無添加ミートボールが売れているなら、競合他社も参入すると思うのですが、地元スーパーを見る限り、確かに無添加のものはありませんでした。作るのが難しいのか、市場規模が小さいから相手にされないのか、理由はまだよく分かりません。

四半期売上とGP、SGA、OPの推移は以下の通り。GPMは30-35%で安定。量産効果で販管費率が下がり、結果としてOPMが綺麗に改善しています。今期の売上は$40-45mmですが、現工場は$75mmまで限定的な追加投資で拡張できるので、どこまでOPMが改善するか楽しみです。

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コロナ禍の追い風で、Q1とのQoQでも売上増加するかなと思っていたので、ちょっと拍子抜けです。そのせいか、株価は-15%の大暴落。。。大暴落してから慌てて色々調べ始めるのが良くない癖ですが、最大顧客が売上の46%を占めていることに気が付きました(遅いよ。。。)。

MMMBの短期業績は、良くも悪くもこの会社(おそらく、フロリダ本社のPublixというスーパーチェーン)次第。Publixは非上場、評判は非常によく、顧客としては申し分ないのですが、売上の半分を占めるとなるとやはり心配です。

ベースケースとして、現在稼働している工場がフル稼働で売上75mm。OPM10%、Tax20%として、NP6mm。P/E16.7xで本質価値100mm、一株$2.56。アップサイドとしては、OPM15%まで改善して、本質価値150mm、一株$3.84。$2.00という株価では、特に割安でも割高でもないという印象です。

顧客依存リスクに気を付けましょう!

追い風参考か、自助努力か

業績が伸びる企業を買いたいのは当然ですが、なぜ伸びているのか気にするようになりました。大きく分けると、

(1)業界全体が伸びている追い風で伸びている場合
(2)業界全体は伸びていないが、自社の取り組みによって伸びている場合

があると思っています。

コロナ禍でデジタル投資が加速するから、システムインテグレーターはどこも大忙し、というは(1)。日本の家具市場は過去数十年に渡って伸びていないが、ニトリとIKEAは大忙し、というは(2)。

ベストは、追い風を受ける業界に属しながら、かつ自社の取り組みも優れているケース。Amazonは、EC化の波 x 運転資本マイナス x 余剰キャッシュを自社物流投資という複合要素で、駆け上がっていきました。

しかし、追い風を受ける業界の場合、業績が追い風由来か、自助努力由来かの見極めが難しいです。各社とも業績好調ですからね。逆に、「家具」のように、伸びしろがなさそうな業界で高い実績を出している企業は、自助努力だと自信が持てます。

自助努力のできる企業(ピーター・リンチの言う、「砂漠に咲く花」)に投資するようにしています。

ポジション配分

最近、ポジション配分の重要性を考えることが多いです。本質価値に対して市場価格が割安に見える企業が見つかったとして、いくら投資するのかという問題です。

例えばAさんが資産の5%投資した場合、めでたく2倍になったとしても、資産は5%しか増えません。Bさんが同じ株式に50%投資していれば、資産は50%増えます。じゃあ、多く投資すれば良いかというと、投資には間違いが付き物なので、資産の50%投資して20%値下がりしたら、資産は-10%になってしまいます。

経験上、割安に見える株が年に数社は見つかります。これまでは1社に12.5%と考えて投資してきましたが、最近、どうも保守的すぎるのではないかという気がしてなりません。しかし、一方では稼ぎたくて気が急いているだけかもしれない。コロナ相場で大儲けしている人たちに置いてきぼりになっている気がしているだけかもしれません。自分がリスクを取りたい思ってしまうときこそ、リスクに慎重になるべき時期かもしれません。

結果として、慣れ親しんだポジション配分を変えることがなかなかできません。

6062 チャームケア 競合比較(まとめ)

チャームケアの立ち位置を理解したく、老人ホーム運営トップ10について比較をしてきました。以下の表にまとめてみました。

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私が考える介護事業のポイントは、収益が安定する施設事業(特に介護付ホーム)とドミナント出店です。

例えば訪問介護は、ケアマネージャーや利用者の都合で、別事業者に置き換えられてしまいます。老人ホームに入居した場合、終の棲家として平均3-5年の利用が見込まれ、主な退去理由は体調不良による入院です。特に介護付の場合、介護度に応じた報酬金額が固定されていますから、サービス内容に応じて介護請求する住宅型より収益が安定します。

介護付ホームは設置に自治体認可が必要なため大量に供給されるリスクが低く、需給バランスが崩れにくい、つまり入居率が安定する可能性が高いと思います。

介護付ホームとドミナント出店を戦略としている企業は、チャームケアと木下の介護、ベネッセのようです。ベネッセは本業の教育事業の立て直しに苦戦しているため、介護専業という条件を加えると、チャームケアと木下の介護が戦略面では優位に立つのではないかと思っています。

6062 チャームケア 競合比較(HITOWAケアサービス)

老人ホーム運営ランキング6位はHITOWAケアサービスです。1997年に長谷川芳博氏が創業。2016年にCVCという欧州ファンドが買収して社名変更しています。2019年にはポラリス・キャピタルが買収したそうです。CVCによる立て直しが成功したということでしょうか?

下のグラフは左が累計施設数、右が新設数です。2013-2017年に大量出店した後、直近では新規出店がストップしています。

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2012年で20施設運営していた企業が、毎年20ホーム出店したため、財務に相当ストレスがかかったと想像します。2016年のCVCによる買収は、新規出店に伴い財務状況が悪化したためだったのではないでしょうか?CVCは新規出店を止めて財務状況を改善し、ポラリスに売却したと考えると、辻褄が合います。実情は全然違うかもしれません(笑)。

2016年の日経新聞記事によれば、買収価格は350億円(売上270億円、営業利益10億円)。積極的なM&Aによる拡大とIPOを目指すと書かれていますが、その後新規出店は止まり、IPOではなく別ファンドへの売却によるエグジットとなりました。ポラリスへの売却金額は500億円だそうです(売上490億円)。3年の投資期間で40%リターン。レバレッジも加えてさらに利回りは上がるでしょうから、十分な投資リターンとなったようです。

ポラリスは3-5年後にIPOを目指すとありますが、どのように新規出店戦略を考えているのか気になります。