てんせんめんの長期投資の旅

投資を学び、資産と自分自身の成長を 追及していきます

ポートフォリオ断捨離

コロナ禍で、マクロ動向を気にしてバタバタと取引してしまった結果、気付いてみたらポートフォリオが随分と散らかっていました。

長期的に高い運用成果を残した投資家のアドバイスとして、「投資先は5~10銘柄に絞る」というものがあります。あえて数を絞ることで、結果として自信のある銘柄のみでポートフォリオを構成することができます。

これまで6社を目標に運用してきました。ところが、最近決算発表も終わってコロナ禍の影響が何となく見えてきたような気がして足元を見てみると、なんと15社近く保有してしまっていました。米国債はあるは、金はあるは、もう滅茶苦茶です。

ドタバタと取引して、見えていたチャンスもあったけどほとんど引き金は引けず、結局年初来約±0%という厳しい現実(税金支払いがあるので、実質マイナス)に疲れながら、ポートフォリオ断捨離を始めました。

厳しい投資環境になると自信がなくなり、どうしても分散したくなります。ルールを破りたくなるときほどルールを守ることが大切だと、毎度後になって同じことに気付くのですが、下落相場の渦中で恐怖心が頭をもたげている中で思い出すためにはどうすればよいのでしょうか?

GAN 3年後の本質価値

昨日のエントリーに引き続き、GANの3年後の価値について考えてみました。

まずは既存市場のNJとPA。コロナ追い風を受けてオンラインカジノ収益が2月から5月に急拡大した後、5月から7月は横ばいで推移しています。今後はどうなるのでしょうか?季節性があるのか、実物カジノ売上を見てみました。NJの実物カジノ収益は例年7-8月に増えていますが、PAには季節性が見られません。NJはアトランティックシティというカジノリゾートに夏休みに来る客が多いのではないかと想定しています。オンラインカジノも成熟市場では季節性がないと予想します。

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次に、オンライン倍率について考えてみました。NJの実物カジノ収益は、月220mm。対して、オンラインカジノ収益は月85mmとオンライン倍率は40%です。一方、PAの実物カジノ収益は月270mmに対して、オンライン収益は月55mmとオンライン倍率は20%です。NJのオンライン倍率は上昇余地があるのか?PAのオンライン倍率も40%まで追いつく余地があるのか?現時点では私には分かりません。実物カジノが再稼働してオンライン収益が下がるリスクもあるので、先行き横ばいという見通しが現実的かなと思います。

GANが成長するには、PAとNJで新規顧客を見つけるか、新しい州への展開のどちらかが必要になります。2020 Q2のPAとNJのオンラインGOR合計は400mmで、GANのアメリカのGORが91mmと、約23%シェアを獲得しています。今回の決算発表で、8月末でFanDuelのスポーツ賭博向けサービスの終了が発表されました。大手顧客の離脱リスクを再認識させるニュースで、株価急落の主因だと思います。一方、Penn NationalやCordish Gamingなど新規顧客も発表されています。DraftKingsの決算説明会でも、自社技術プラットフォームへの移行を目指すとコメントがありました。大手事業者にとって、収益の5%をバックエンド事業者に払い続けることを苦々しく思っているでしょうから、DraftKings同様に自社プラットフォームの開発を志向すると予想されます。一方、中小カジノ事業者はスケールメリットがないので、GANなどのシステムを利用せざるを得ない。長期的には、大手事業者が中小事業者を買収すると同時に、自社プラットフォームへ切り替えると予想します。特に自社プラットフォームを持つ大手事業者であれば、中小事業者を買収してプラットフォームを切り替えることで、利益率が5%も改善する訳ですから、魅力的です。ここも、離脱リスクと獲得チャンスをバランスさせて、シェア横ばいをベースケースと想定します。

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最後に、市場拡大余地です。既存市場横ばいで、年間GORは590mmです。2021年中の市場解禁が予定されているMichiganとOhioでNJやPAと同様の収益を達成できると、2021年のGORは700mmまで成長することになります。Take RateがQ2の6.5%から横ばい前提で、本質価値は$7.2。

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上記強気シナリオ+Take Rate 7%前提で、本質価値は$18。オンライン倍率や市場シェア、Take Rateの条件次第で、高い時価総額を説明することもできます。しかし、現在の$20を超える株価は、強気シナリオも超えており、売却判断になります。

このような具体的な分析を怠り、株価上昇に浮かれてQ2決算をまたぎ、株価-20%の急落に見舞われてしまいました。冷や水をかけられてから我に返って分析してみるのは、いつものパターン。当初の想定では3年後の本質価値を$20と見込んで投資していましたが、$20を超えてもさらなる上値を期待して保有を続けてしまいました。神戸物産など優良企業を早く売り過ぎたトラウマが残っています。売りは難しいです。市場が楽観に満ちている時ほど、自分も含み益で気持ちが大きくなっているときほど冷静になるには、どうすればいいのでしょうか?ブログを書くことで、少しは客観視できるようになると良いのですが。

GAN 2020 Q2 決算発表

8月20日(木)の米国株式取引終了後、GANの2020 Q2決算(4-6月)が発表されました。

GANの収益は、システム提供しているカジノのGross Operator Revenue (GOR) x Take Rate (TR)と理解するのが良いと思います。GORはさらに総利用日数 x 単価に分解することができます。2019 Q2と比べたKPIは以下の通りです。

総利用日数:4.8mmから5.6mm +16.7%増加
単価:   $11.52から$23.02 +100%急増
TR:    7.6%から6.4%   -15.7%減少

GORは55mmから129mmと+135%増加し、売上は4.2mmから8.3mmと+98%増加しています。コロナ禍で実物カジノが閉鎖される中、オンラインカジノ利用が急増していますが、成長の大部分は単価上昇(+100%)由来で、総利用日数は+16.7%とそこまで伸びていないことがポイントかなと思いました。

ニュージャージー州(NJ)やペンシルバニア州(PA)のオンラインカジノ売上もここ数ヶ月はGORが横ばいになっていて、GANの成長は既存州での新規オペレータ獲得+新規州の市場開放にかかっていると思います。

現在の市場はNJ(890万人)やPA(1280万人)。近日中に開放が予定されているのが、ミシガン州(1000万人)です。人口比では市場が倍増することになりますが、NJはアトランティックシティというカジノ街があるので、単純に人口比で市場想定して良いのか悩ましいところです。

また、単価はどこまで上がると考えれば良いのでしょうか?NJの月次データを見る限り、伸びは鈍化しつつあります。6月の水準で横ばいと仮定した場合でも、4-6月平均よりは上振れるはずです。

書評 Invest Like a Guru

gurufocus.comを運営している、Charlie Tianさんによる一冊。北京大学で物理学博士号を取得して、光ファイバーの研究をするためにITバブルに湧くアメリカに来訪。光ファイバー企業への株式投資で失敗したことから、投資に目覚めたそうです。

数々の名投資家の運用スタイルを検討した結果、「良い企業にだけ投資する」というシンプルな結論に達したそうです。Peter LynchやWarren Buffettは、清算価値以下で購入するディープ・バリュー戦略、赤字企業の復活にかけるターン・アラウンド戦略、シクリカル企業への投資など多種多様な投資戦略で成功を収めることができますが、それは達人の話。一般投資家としては、Donald Yacktmanのように、シクリカル企業には投資しないという明確なスタンスの方が、シンプルで参考になります。

Charlie Tianさんの言う、良い企業とは何か?

1、過去10年間(景気サイクルを通して)安定した利益を上がることができたか?
2、高いROICを達成しているか(アセットライトな事業か)?
3、売上・利益が持続的に成長しているか? 

米国企業の2006~2015のバックテスト結果は以下の通りになっています。

1、過去10年間連続黒字だった企業は、3,577社のうち1,045社(29%)のみ
2、1,045社のROIC中央値は6%。ROIC20%以上を達成したのは20%のみ
3、1,045社の10年平均EPS成長率は7%。年率15%以上で成長したのは15%のみ

チェックリストにまとめると、以下のようになります。

1、景気サイクルを通して黒字だったか(2008-2009年を含む)?
2、過去10年の平均ROICは20%以上か?平均ROEは15%以上か?
3、過去10年のEPS年率成長率15%以上か?

1~3全てを満たす企業は、米国でも100社以下。製造業シクリカル企業の多い日本ではもっと少ないでしょう。しかし、それらの数少ない勝ち組にしか投資しないと決めることで投資はシンプルになり、何より時間を味方に付けているので負けにくくなります

今年は、シクリカルなタンカー投資やアウトソーシング、成長性のないエイジス、IPO前に赤字になっていたシンメンテ、などチェックリストから外れた失敗例のオンパレードで耳が痛いです。

"Keep it simple." - Charlie Munger

年初来リターンが0%に復帰

3月に-20%にまで落ち込んだ年初来リターンが、ようやく0%まで回復しました。時価ということで、明日にはまた年初来マイナスになっているかもしれませんが、個人的にはコロナ禍に一区切りという気分です。今年はコロナ禍で投資チャンスが多かったにも関わらず、ほとんどモノにすることができませんでした。反省点ばかり残る最初の8カ月です。

1、甘いボールが来ていると認識しながらも短期的なコロナの影響を気にしすぎてバットを振れなかったパターン:3922 PR Times(900円台>現在2200円)、6062 チャームケア(700円台>現在950円)、7508 G-7(2400円台>現在2800円)。

2、コロナのマクロ影響ばかり気にしていて、甘いボールが来ていることすら気付かなったパターン:7094 NexTone(2000円>現在8000円)

3、コロナで長期業績は分からないから、超短期的に追い風が来ている分野に投資して逆に失敗したパターン:タンカー各社

4、買付から2年間は損切しないというルールを破り、たいていは悲観の極みで投げるパターン:2427 アウトソーシング、6086 シンメンテ

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よくもまあ、半年でこれだけ失敗したものです。仮に上記のように昨年末PFを放置した場合、年初来リターンは-3.3%です。バタバタと取引した結果、多少はましな結果になっているのが救いですが、反省点の多い一年となりそうです。

他の投資家が、年初来+20%、+50%、+70%というような数字を発表する見るたびに、心がえぐられるような気分です。もし自分にチャンスが見えなかったのであれ悔しくもならないですが、今年は自分にも投資チャンスが十分に見えていた。にもかかわらず、行動できなかったというのは、本当に残念です。

マクロは無視する、よい会社しか買わない、損切ルールを守る、という3点を徹底していきます。

GAN 市場規模はどのくらい?

GANは、アメリカのオンラインカジノ事業者向けにバックエンドソフトを提供しています。コロナ禍で実物カジノが閉鎖され、代替需要としてオンラインカジノが急成長していることは理解できますが、本質価値を8月12日にリリースされた、Canaccord Genuity Annual Growth Conference資料から考えてみました。

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米国オンラインカジノ事業は2020年に2.3bnから成熟時に30bnに成長すると予想されている。うち、GANパートナーシェア x Rev Shareをかけると、ベースケースで13.6bn x 20% x 5% + 17bn x 30% x 6%= 440mm。

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成熟時、Rev Share以外のサービス売上が25%とすると、合計売上は590mm。利益率はadj.EBITDA margin 40%に、EBITとの差額が10mmとすると、EBIT 226mm。EBIT marginは38%で、競争力あるBtoBのSaaS事業がスケールした状態としては妥当だと思います。成熟時のPER 15.4xとすると、本質価値は2.6bn、一株あたり$83(現在$23)。

会社資料では成長スピードが記載されていませんが、市場成長率30%とすると、10年で成熟し、株価リターンは年率14%見通し。

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市場成長初期なので、シナリオ幅は広くなってしまいます。弱気シナリオでは、アップサイドは$30までしか見えません。

9435 光通信 2021年3月期Q1決算

8月13日に、光通信のQ1決算が発表されました。この企業、私は日本で有数の資本配分の上手い会社だと思っています。「企業価値はフリーキャッシュフローの現在価値の総和であり、企業価値を最大化するためにキャッシュフローの最大化を目指す」という、米国企業では当たり前の考え方を実践している、珍しい日本企業です。Berkshire Hathawayの会社HPと似たシンプルな会社HPなど、思わずニヤッとしてしまいます。

光通信の本質価値を算出するには、表面的な業績はあまり参考にならないと思います。決算説明資料では、営業利益=ストック利益ー顧客獲得費用と分解してあります。顧客獲得費用が増えれば増えるほど、今期の営業利益が減少し、将来の営業利益が増えます。足元の営業利益だけを見ていると、業績トレンドを見間違えるかもしれません。

さて、コロナの影響を受けた4-6月のQ1、OPはYoY-9%の225億円でした。健闘したけどやっぱり悪影響受けてるねと思うかもしれませんが、

昨年のQ1 OP246億=ストック利益270億 - 顧客獲得費用57億+その他33億

今年のQ1 OP225億=ストック利益324億 - 顧客獲得費用95億-その他4億

OP減益ですが、ストック利益が20%増え、しかも顧客獲得費用も大幅増している(つまり将来の利益が増える)好決算だと思います。同じOP減益でもストック利益が減り、顧客獲得費用も減っている減益とは大違いです。コロナの影響を受けて法人向けサービスが弱含むかと思っていましたが、今のところは全くの杞憂に終わりました。

「販売好調により獲得コストが増加し営業利益は減少しましたが、長期安定収益であるストック利益は増加しています。」というシンプルなコメントに全てが凝縮されています。日本一の営業力を持つ会社だとは思っていましたが、まさかコロナ環境下で販売好調とは恐れ入りました。