てんせんめんの長期投資の旅

投資を学び、資産と自分自身の成長を 追及していきます

ポートフォリオ(2020年8月末)

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尊敬する投資ブロガー、ろくすけ氏を真似して、月次でポートフォリオを公開していきます。

8月はコロナ後にバタバタと取引して散らかってしまったポートフォリオの整理に注力しました。現預金+金で30%以上もあるのは高いと感じていて、投資余力が20%以下になるように投資先を探したいです。

6062 チャームケア 競合比較(木下の介護)

老人ホーム運営数5位は非上場企業の木下の介護です。1995年創業で、首都圏で主に老人ホームを運営しています。施設数は、老人ホームとサ高住を合わせて113です。次のグラフの左が施設数、右が新規開設数です。

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施設の伸びを見ていくと、2000年代前半に急拡大したあと、2014年-2016年にペースダウン。2017年から再拡大しています。2016年の 佐久間社長インタビューを要約すると、「建築費高騰を受けて2015、2016年前半は新設ストップしていた。入居率は82%。消費者は手厚い介護よりも低価格を求めているので、低価格帯のリアンレーヴを増やしていく」とのことです。2016年以降の開設数推移は、インタビューのコメント通りです。収益性を踏まえて、投資のアクセルとブレーキのメリハリが効いているイメージです。

2016年の入居率82%と聞いて、95%以上のチャームケアやベネッセのと比べて低いと感じました。足元の入居率は95%以下のようです。「空室5以上」というような記載のため、はっきりとした空室数が分かりませんが、チャームケアやベネッセよりは確かに入居率が低そうです。低価格路線ということもあり、チャームケアとは直接競合しないかなという印象を持ちました。

6062 チャームケア 競合比較(ニチイ学館)

老人ホーム運営数4位は9792 ニチイ学館です。1968年に医療事務受託事業として創業。介護業界に多角化して2001年より施設介護に進出しています。2008年にはグッドウィル・グループ傘下のコムスンが介護報酬不正請求から行政処分を受け、ニチイ学館が買収します。ニチイ学館オリジナルの老人ホームは現在「ニチイホーム」というブランドで、前払金なしの月額利用料は平均35万円と高額です。一方、コムスンから買収した老人ホームは「ニチイケアセンター」というブランドで、同じく前払金なしで月額20万円と低価格になっています。また、ニチイホームは首都圏特化型ですが、ニチイケアセンターは広く薄く全国に展開しています。また、住宅型が一つもないようです。

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現在の有料老人ホームの数は両ブランド合わせて149です。ニチイケアセンターはグループホームが282ありますが、老人ホームとは直接競合しないので除いています。老人ホームの開設推移を見ていくと、アップダウンがあります。特に直近3年間は新規開設が少なくなっています。既存物件の入居率は高そうですし、新規開設コストがないため介護事業の利益率も10-11%で高原安定しています。なぜ直近の開設がないのかは、有報を読んでも良く分かりません。施設数や稼働率など、基礎的な経営データすらなく、時価総額1000億円を超える介護業界を代表する上場企業の一つの割には開示が悪いという印象を受けました。

低価格帯路線に力を入れていないことは明らかです。チャームケアやベネッセと同様に、都市圏ドミナント+介護付+高価格帯というのが、現在の経営環境における最適解とみている気がします。この点で差違がないのは、チャームケア株主としては残念な点です。ちなみに10-11%という利益率は低価格帯と高価格帯のミックスなので、高価格帯が14-15%稼いでいても不思議ではなく、チャームケアの既存事業利益率のヒントになります。

ニチイ学館は2019年9月に創業者寺田明彦氏が死去されました。その後、2020年5月にベインキャピタルによるMBOが発表されました。非上場後の経営戦略は分かりませんが、おそらく教育など不振事業撤退を急ぎ、安定的にキャッシュフローを稼げる医療事務外注と介護事業を残して再上場するプランではないでしょうか?借入返済を優先して投資を絞ってくれると有難いのですが、3-5年先の再上場エグジットを目指しているのであれば、投資を再開して、成長できる企業としてバリュエーションを高めてくる可能性もあります。チャームケアの競合として、高価格帯の運営実績も十分ですし、一番気味が悪いと感じます。

下のグラフはニチイ学館の過去20年のEPS推移です。ご覧の通り、2011年のGABA買収など多角化が失敗して鳴かず飛ばずでした。医療事務と介護の主力事業はなお日本トップの競争力があるので、ベイン買収によって眠れる獅子が起きないと良いのですが。

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6062 チャームケア 競合比較(ベストライフ)

老人ホーム運営数ランキング第3位はベストライフです。本社は東京の新宿。2001年創業。社員数は約3400人、入居者数は約1万人です。比較のため、チャームケアは社員数約2000人、入居者数約4000人なので、ざっと2倍の規模感です。

長井力さんが社長を務めていますが、インタビュー記事など検索しても、あまり出てきません。2015年に仙台のホームで2件の虐待事件があったようです。ちょうどメッセージの事件と時期を同じくします。ホーム数拡大に人材不足の影響が重なり、現場が疲弊していた時期ということなのでしょうか?

2020年8月時点で、ベストライフは179施設を運営します。介護付132、住宅型46、サ高住1です。下のグラフは左が年ごとの施設数合計、右が年ごとの開設数です。会社HPの事業展望で、2006年からの総量規制で経営環境が大きく変化したと書いてありました。実際、2006年からの開設数は大きく減少(景気後退の影響もあるかもしれません)しています。2010-2012に地価が下がったためか開設数が戻りますが、足元は年間4ホームに留まっています。

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月額料金は全ホーム平均16.5万円と20万円を下回り、低価格戦略のようです(チャームケアは平均33万円)。チャームケアが指摘しているように、低価格では売上の介護報酬依存度が高くなり、政策リスクが高まります。さらに、不足する人材に十分な給与を支払うことができません。高齢化で介護ニーズは十分にあると想像しますが、人材獲得の問題から開設ペースが鈍化しているのではないでしょうか?価格帯の違いからチャームケアの競合とは言えないと思いました。

6062 チャームケア 競合比較(SOMPOケア)

老人ホーム運営数ランキング2位はSOMPOケアです。もともとは2400 メッセージという上場企業でしたが、2015年にSアミーユ川崎幸町というホームで従業員が高齢者を転落死させた不祥事を受けて入居率が低迷。メディアを賑わせてしまった「アミーユ」から「そんぽの家」とブランド刷新し、大手損害保険会社であるSOMPO傘下での再建を目指してきました。

下のグラフ、左はメッセージの売上高(10億円)とSOMPOグループ介護事業の売上高推移です。右は、メッセージ時代の拠点数の推移です。2013年3月期からサ高住が急増しています。SOMPO傘下になってからは施設数の開示がなくなってしまいました。しかし、チャームケア決算資料ではSOMPOケアの施設数は278となっており、2016年3月から変わっていないようです。

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営業利益率を見ていくと、2013年3月期に大きく低下しています。サ高住の大量出店による先行投資だと思いますが、その後出店ペースが鈍化しても利益率が回復していない点が気になります。チャームケアも指摘しているように、介護付老人ホームの方がサ高住より収益性が高いという表れではないかと思います。

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SOMPOホールディング傘下で、SOMPOケアは周辺事業という位置付けになってしまいました。2020年3月期の経常利益1900億円のうち、介護事業は100億円しかないので、仕方ありません。決算説明資料全47ページのうち、介護事業は2ページしかありません。

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中期経営計画でも、介護事業は「入居率を高水準で安定させて、収益性向上フェーズ」とあり、規模を追う姿勢は感じられません。資金力があるSOMPOグループが新規開設に慎重な点は、チャームケア投資家にとっては朗報です。

チャームケアなど介護専業は、魅力があろうとなかろうと、成長のためには新規開設するしかありません。しかし、介護事業を他事業と比較して資本配分しているSOMPOホールディングのような会社が、介護事業に対して旨味がないと見ている可能性については注意する必要があると感じました。

 

(2020年8月30日追記)

2016年3月のメッセージ買収前に、2015年12月にはワタミの介護事業も買収しています。旧メッセージの施設は、老人ホームは「そんぽの家」、サ高住は「そんぽの家S」、旧ワタミの老人ホームは「ラヴィーレ」ブランドで展開しています。

6062 チャームケア 競合比較(ベネッセ)

老人ホームを運営するチャームケアを調べるにあたり、競合他社の状況を調べてみました。チャームケアの決算説明資料によると、ホーム数上位10社は以下の通り。上位10社でも市場シェア10%に満たない、まだまだ寡占化の遅れた業界になっています。

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まずは1位のベネッセから見ていきます。ホーム数の推移と年ごとの増減は以下の通りです。右肩上がりに順調に伸びてきていますが、最近では増加スピードが鈍化しているようです。業界最大手でも、チャームケアと同等の年間10ホーム以下しか開設できていないというのが印象的です。人手不足がネックなのでしょうか?従業員1人あたりの付加価値を高めるべく、高価格帯ホームを志向しているようで、チャームケアと戦略が重なるのは懸念点です。

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既存施設入居率は安定的に95%を維持していて、順調そうです。営業利益率も安定的に8~10%を稼いでおり、セグメント利益ベースROAも6~7%で安定しています。税率30%として、当期利益ROAは5%。財務レバレッジを2倍かけてROE10%を達成できます。

ベネッセは、通信教育事業(進研ゼミ)や語学事業(ベルリッツ)という主力事業がIT化による新規参入(タブレット学習やオンライン語学)に脅かされており、決算説明会でも介護事業についてほとんど言及されていません。「介護は順調です。それより大変なその他事業の話をします」みたいな感じ。決算説明の全てが介護事業に費やされるチャームケアとの差は歴然としています。

介護事業は全社利益の50%を安定的に稼ぐ屋台骨だと思うのですが、あまり力を入れているように見えないのは、チャームケアなど介護専業事業者にとっては朗報に感じます。新規ホーム開設を抑えて他事業の立て直しに資金を使ったり、ベネッセの精鋭社員が教育や語学の立て直しに奔走しているすれば、老人ホーム専業のチャームケアに投資する身としては有り難いです。

かみ合わない

ポートフォリオ整理を始めて、小さなポジションを売却した途端に株価が上がってしまいました。株価が上がるから買おうと思っていた銘柄は買い増しできず。GANの利益確定は遅れ、神戸物産の利益確定は早過ぎ・・・どうもかみ合ってません。

数十年に及ぶ長期投資の旅路、半年間上手くいってないからと慌てても仕方ないと頭では分かりつつ、置いてきぼりの気分になってしまうのも事実です。人間ですから。

どんな優秀な投資家でも、3年間くらいのアンダーパフォーマンスが続くこともあるとか。自分の投資ルールを疑ってしまいそうになるときほど、信じられるかどうか。というか、今年は既に相当逸脱してしまって、結局はいつものように反省に終わった訳ですが。同じ道を歩き続けられるかどうか。胆力が試されます。

ピーターリンチの動画を見ました。「マクロ予想なんて無意味。FRB議長ですら、3年先の長期金利が分からない世界で、一介の投資家に予想できるはずがない。マクロ環境に関わらず、収益が伸びる会社の価値は上がる。」コロナ禍で思わずマクロに目移りしてしまい、身動きが取れなくなったので耳が痛いです。素直に収益が伸びる会社を買っていれば・・・というのは後の祭り。

https://www.youtube.com/watch?v=hKdtS_0vQ48

じゃあどうするの、と言われると、結局はルール通りにやるしかないよねといういつもの話。短期的には機会損失もあるでしょうが、まずはルール逸脱した部分を戻して、落ち着いて冷静に戦える体制を整えることが先決です。言うは易し・・・。